赤羽署からの連絡でやって来たＨトラベルの社長と母親だった。
　社長は、心当たりはないという。

「以前、マレーシアへ添乗員として行ったツアーで客の一人が事故死したんです。その後しばらく休養していて、先々週から仕事に復帰したところなんです。特に気になる点は気づきませんでした」
　母親も泣き崩れて言うのだった。
「元気に仕事に精出していたのに。どうしちゃったんでしょう。さっぱりわかりません」

　赤羽署では直近のツアーの参加者の名簿を旅行社から貰い、個別に事情を聴いた。
　しかし、ツアーの客からもそれらしい情報は得られなかった。
　女性のマンションも捜索した。普通の女性一人暮らしのようだ。事件の手がかりになりそうなもんもはない。パソコンのデータにも特筆するようなデータは残っていない。
　事件の捜査は行き詰ってしまったのだ。