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　彼女、石田恵子は明日から九州へのツアーの添乗員に復帰する予定だった。
　ツアーは羽田から大分空港へ飛び、別府の地獄めぐりをして湯布院温泉に宿泊、つぎは熊本の杖立温泉宿、そして最後が長崎へ行く予定のツアーだった。
　当日、羽田でツアーの一行と合流して、ツアーを開始した。
　集合した参加者を点検した石田は、一人の男に注目した。
　彼は三十過ぎの若い男だった。名簿で確認すると加藤という名前だった。連れの女がいた。女には記憶がない。
ーーあれ、あの人、どこかであったことがあるよ。どこだったかな？ーー
　何処かであったことがあるような気がした。どこだったっけ？
何処かへツアーで行った時にあったような気がする。でも、思い出せないのだ。
　とりあえずツアーは出発した。

　羽田から大分空港までのフライトは快適だった。大分空港は国東半島の東側にある。ここから貸し切りのマイクロバスで別府へ。亀川の地獄めぐりに行くのだ。ここは最近韓国からの観光客が多いという。

　まあ、こんなものか。地獄というのは温泉だよ。海地獄もいいが、間欠泉の竜巻地獄もいい。
　しばし地獄めぐりをしてから、次は湯布院へ向かった。
　今夜はここで宿泊だよ。

　湯布院もいい温泉だよ。いまじゃ、別府温泉より湯布院のほうが有名なんだ。あちこち散策する。