朝見は日本紀行からの帰りにＨ旅行社へと行った。
　大川社長は若い女性社員とともに朝見を待っていた。
「ああ、朝見さん、ご苦労様でした。黒川さんからいいルポが書けたと言ってきたよ。ご苦労様でした」
　ルポの原稿を渡してから、朝見は総督との面談を詳しく語った。ルポに書けないことだって多々あるのだ。
　話を聞き終わった大川社長が隣の女性社員を紹介した。
「じつはね、この子がティオマンツアーの時の添乗員だった石田くんだ。あれから自分の責任を感じてしばらく休養していたんだが、今日から再び仕事に復帰したんだ。ティオマンでの事故がはっきりすればいいと思って呼んでおいたんだ」
「こんにちは、石田です。だいぶ落ち着きました。現地でいろいろと調査していただいたそうで、ありがとうございます。しばらく国内のツアーに専念します。今後もよろしく」
「やあ、ごくろうさま。どうもティオマンでのは事故だったみたいですよ。あまり気にしなくてもいいんじゃないですか」