話を聞いた玉木夫妻はびっくりした。まさかこんな話になるとは。
「お話は分かりました。少し考えさせてください。またご返事します」

　帰宅してじっくり考えた玉木夫妻だった。 

　娘の慰霊の旅というのは、魅力的な話だった。
でも、ルポライター同行というのはどうしよう。朝見充彦という名は知っている。よく読む日本紀行に、なかなか読み応えのあるルポを掲載しているのは知っている。でも、実際はどんな人間なんだろう？
　弁護士に頼んで朝見充彦なる人物を調べてもらった。

　すぐに調べた弁護士だった。それによると、ルポライターの傍ら、いろんな事件に首を突っ込んで事件解決に力を発揮している三十四歳の人物だった。兄は検察庁の幹部で、信用できる人物と分かった。

　弁護士が言った。信頼できる人物ですよ。あまり心配ないですよ。 

　数日後、Ｈトラベルの経営者に電話してまた会ったのだった。
「この前の話、よくわかりました。いいでしょう。この鎮魂の旅で損害賠償の話は取り下げます。朝見さんの同行も認めましょう。でも、お互いに知らないことにしましょう。それから四十九日が済んでからにしてください」