２

　翌週、前橋のルポを書き上げた朝見のところに電話が入った。
　桜田からだった。会ってお話したいとのことだった。　
　場所は浅見の都合のいい場所ということで、上中里のいつも使う平塚亭と思ったが、こんな若い美女と二人で会うにはちょっとふさわしくない。
　そこで帝国ホテルの喫茶ルームで、翌日の午後一時ということにした。

　少し早めに行って待っているうちに、桜田がやって来た。
「こんにちは。お会いできてうれしいわ。ちょっとお願いしたいことがあって」
「いいですよ。どういうことでしょう」
「じつは、この前、小沢さんが五井の港でおぼれてなくなったんですけど、その少し前に、小沢さんから手紙が届いたんです。これなんですけど」
　見せられた手紙には、一行だけ。
　ーーこの写真、大切に持っていてくださいーー
　それと二枚の人物の写真があった。

　小沢の事件は浅見の耳に入っていなかった。
　しかし、それを見た朝見の脳裏に、ひらめくものがあった。
　ーーあ、この写真の男、どこかであったみたいだ。そうだ、黄金崎で見た男だ。ーー
　そうか、この男と何らかの関係があるんだ。
　桜田がさらに頼むのだった。
「小沢さんが酔っ払って溺れて死んだなんて、信じられないんです。朝見さんの手で真実を調べてもらえませんか」
　そう言って頼む桜田だった。
　こんな若い美女に頼まれては浅見はノーとは言えない。
「わかりました。わたしでできるだけのことを調べてみましょう。桜田さんは、あまり心配しないで、仕事に精出してください。せっかく、ここまで人気が出てるんですから」