安倍はすぐに黒川編集長に連絡した。
「黒川さん、ちょっと事情があってね。明日にでも朝見さんに連絡とりたいんだけど、どうしたらいいですかね」
「ああ、安倍さんか。彼は明日は前橋にいるよ。ちょっと仕事が入ってるんでね。多分、広瀬川あたりを散策してると思うよ」
「そう、ありがとう。連絡してみるよ」

　電話を切った安倍は桜田に言った。
「きみ、明日は前橋で公演があったね。ちょうど朝見さんは前橋にいて、広瀬川あたりを散策してるそうだ。かれに電話してみようか」
　少し考えた桜田が答えた。
「わたし、公演の合間に広瀬川を歩いてみるわ。そこで朝見さんに会うようなことがあったら、小沢さんの件もうまくいくような気がします。偶然って形でお会いできることは、連絡して会うよりいい結果がえられるような気がします」
「そうか、じゃ、そうしたまえ。そのあとはしばらく仕事は入っていないから、明日駄目でもそのうちにあええるだろうよ」