ここから広瀬川沿いに散策する。

　前橋城の内堀の後のさちの池のほとりに建つ県庁を後にして広瀬川沿いに歩く。水量の豊富な広瀬川沿いはよく整備された散歩コースです。前橋が生んだ詩人、荻原朔太郎の銅像がたつ文学館までの数キロメートルは風情のあるいいコースだ。いたるところにある歌碑を読みながら詩人の豊かな想像力、心のやわらかさ、命を洗濯されているような感じがする。

　　　　　　広瀬川 萩原朔太郎

　広瀬川白く流れたり
　時さればみな幻想は消えゆかん。
　われの生涯（らいふ）を釣らんとして
　過去の日川辺に糸をたれしが
　ああかの幸福は遠きにすぎさり
　ちいさき魚は眼（め）にもとまらず。

　いいね。この散策路は。
　歩いていると、前から大きな帽子を目深に被った若い女が近づいてきた。
　そして声をかけてきた。
「朝見さん、こんにちわ。お久しぶりです。わたし、桜田です。桜田美和です」
　びっくりした浅見だった。
「え、桜田さん、公演に参加されてるんじゃないの？　こんなところを歩いてて大丈夫なの？」

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