中身は一枚の紙きれだけだった。これも筆跡を隠しているようだ。

　ーー天野芳子さんが死んだ黄金崎にあなたがいた証拠を持ってる。なんなら下田署へ連絡しようか？　また連絡する。それまでじっくり考えなさいーー

　手紙を一瞥した安住は吃驚した。あの女、天野芳子とは不倫の中だった。彼女を篭絡して不正を行っていたのだ。
　彼は天野を篭絡して、問題なさそうな客に対して法定以上の金利を課したのだ。その差額は天野に少しの報酬を渡して、ほとんどは自分の懐に入れていたのだ。資金繰りに困って最後の手段としてやって来る客の素性をよく確かめて、金利を増やしていたのだ。
　でも、それは結局、社内で、露見してしまった。彼は天野が一人でやっていたように細工し、社内の検査を免れたのだ。
　金利の差額は、苦情を言ってくる客には会社としてすべて返した。しいかし、一部の客は消費者金融に頼ることを恥じているのか、何も言ってこない客も多い。
　彼の懐にはかなりのお金がたまっていたのだ。

　しかし、あれほど気をつけて、天野を連れ出して抹殺したのだ。
　遊歩道を行く間も、誰にも見られていない自信があった。だからこそ、下田署も自殺と判定したのだ。なぜだろう。思案する安住だった。
　しかし、証拠とはなんだ？　もしそんなものがあって下田署に提出されたら、彼の悪事はばれてしまう。
　しかし、証拠は？
　もうしばらく待ってみよう。
　なにか、また、言ってくるだろう。