男の身元は持っていた免許証から東京のカメラマン、小沢五郎と判明した。でも、こんなところでなんで？
　小沢は独身だった。結構、仕事をやっているカメラマンだった。
　所持品は財布と免許証だけだ。
　死因は溺死だった。体内からはアルコールが検出された。
　そうか、酔っ払って転落したのか？　死亡時刻は昨夜の遅い時刻と判明した。
　五井駅の防犯カメラを調べた市原署だった。
　夜遅く、一人でぶらぶら歩く男の姿が映っている。

　市原署では小沢の身元を洗った。東京にある彼の事務所を徹底的に洗った。
　事務所の経営状況はあまりよくはない。
　少しばかり借金もあるようだ。
　しかし、特に不審な点はない。自宅のパソコンに残っていたのは撮影した写真だけだった。いろんなところから依頼をされて写真を撮っているらしい。芸能プロからの依頼も多い。女性タレントの写真も結構あった。
　しかし、これだけではどうにもならなかった。

　自宅を詳細に調べた捜査員だった。どうしようのなく、引き揚げようとしたとき、一人の捜査員が押入れの天井裏から二枚の写真を発見した。なんで、これだけ、隠してあったのか？
　写真には一人の女と一人の男が映っていた。
　でも、誰なんだろう。さっぱりわからない。
　とりあえず、二枚の写真を市原署へ持って帰った。

　捜査本部の黒板に貼ってどうしたものかと考えていると、一人の若い捜査員が女の写っている写真の背景を見て言った。
「あ、ここ、黄金崎ですよ。伊豆の。僕、行ったことがあります」
　黄金崎といえば伊豆の有名な景勝地だ。
ここに行ったのなら、小沢とこの女性は何らかの関係があるだろう。