第三章　千葉・五井港での事件

　ここは千葉県、五井の港だった。

　港に停泊している貨物船の船底の機関室では、関西の某設備会社の作業員が二人、仕事にいそしんでいた。外洋を航行する貨物船の飲料水製造装置の試運転にいそしんでいた。この貨物船はもうすぐ、南アメリカに向けて出発するのだ。最後の試運転をここでやるのだ。　でも、船の底は、空気はあまりよくない。少しだけど揺れる。仕事が一段落した。息苦しくなって一人が、船外に出た。
　港の岸壁をうろうろしながら一服するのだった。　

　ああ、いい気持。ほっとした彼の眼の隅の岸壁に異様な物体が映っていた。あ、あれは何だ。そばにいて船を監視している貨物船の船員も気がついた。
「あれは？　おいおい、誰か浮かんでるぞ」
　通報を受けてやって来た市原警察署だった。引き上げてみたが、すでに死亡しているのは明らかだった。
　通報した作業員と貨物船の船員だったが、事情は分からない。
　大騒ぎになった埠頭だった。