しかし、朝見の頭には黄金岬で出逢った女性と跡を行く男の姿が脳裏に浮かんだのだった。
　そんなことは口には出さなかった。

「それじゃ、「日本紀行」にもこの原稿を持っていきます。ついでに、読日新聞にも頼んでみましょう。知り合いがいますから」
「うん、頼むよ。ありがとう」

　そして翌週の《週間マンデー》のトップ記事で「天城峠に妖精現る！」という記事が載った。
　反響はよかった。桜田には出演依頼が殺到した。
「久しぶりの大型新人現る！」という記事が各社を飾った。
　読日新聞の芸能欄に掲載された批評記事がその後押しになった。
　翌月に発売された「日本紀行」も大きく売り上げを伸ばした。
　《週間マンデー》からも「日本紀行」からも感謝された浅見だった。
　そして決定づけたのが横浜港で開催された一般向けの撮影会だった。