朝見充彦事件簿(5)
天城峠の妖精

                 
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 (11)

 駿河湾上に浮かぶ富士の眺望がよく、岩肌が落日に染まる頃が特にすばらしい。
 遊歩道を歩く。 いいね 、この遊歩道は。やがて、黄金神社にくる。黄金神社には古くから言伝えがあって、小石を社に御供えすると、願いごとが叶うとされているのだ。
 祠の向かって左側には多くの小さな石が積み上げられ、右側には水が入れられたペットボトルが奉納されており信仰の篤さが窺える。
 小説「獣の戯れ」の一節が刻まれている三島由紀夫文学碑等がある。

 歩きながら、桜田嬢をモデルに写真を撮りまくった。
 やがて、駐車場に戻る。ここで黄金岬を遠景にして最後の写真を撮ろうと、小沢がカメラを構えた。

 その時、一台の車が視界に入ってきた。
「ちぇっ」と舌打ちした小沢だったが、降りてきた女を見てびっくりした。
「あれ、あの女の子、どこかで見たことあるぞ。誰だったかな? ああ思い出した」
 女は一人で降り、遊歩道に向かってさっさと歩いていく。へえ、こんなところに女の子が一人で来るなんて? 訝る小沢の眼に、あとから降りてきた男が映った。やっぱり、男が一緒だったんだ。でも、なんで一緒に行かないんだ。ひょっとしたら、一緒にいるのがばれたら都合が悪いのかな。
 そう考えた小沢は男に向けて、シャッターを切ったのだった。

 それを見ていた朝見は、不審をいだき、つい、自分のカメラのシャッターを切ったのだった。車のナンバーと男の顔を入れて。男は気づかずに、女のはるか後方から遊歩道へと歩いていった。
 やっと、黄金崎での撮影が終わった。

 もう、お昼過ぎだ。
、次の目的地、浄蓮の滝へと向かうのだった。

 続く