「うん、実はね、《週間マンデー》では専属のタレントを育てたいんだって。それで、知り合いのカメラマン、小沢って言ったかな。かれが新人の女性タレントの卵を連れて、伊豆半島あたりで、撮影するんだって。若い美人らしいよ。そこで、朝見ちゃんに同行してもらって、タレントの人となりを観察してもらって、ルポにしてもらいたいんだって。もちろん、ルポの内容は日本紀行にも掲載するよ。日当等はうちよりはるかに多いらしいよ。どうだい、いい話だろ」
「そうですね。いい話ですが、何だって、僕に依頼するんですか？」
「いや、それは安倍社長から直接聞いてくれ。今日、君がここへ来るって連絡したら、彼もここへきて、直接話したいって言ってきたんだ。もう、やって来てもいい頃なんだよ」
「そうですか、じゃ、しばらく待ちましょう」

　コーヒーを飲み終わる頃、安倍社長がやって来た。
「やあ、朝見さん、久しぶりです。以前、文殊の事件の時、貴方の活躍を目のあたりにして、いつかは仕事を頼もうと思っていたんですよ。黒川さんから大体の話は聞いてくれたと思うけど、よろしく頼むよ。《週間マンデー》を発展させたいんだよ。一種の芸能プロに仕立てたいんだ。宜しく頼むよ」
「わかりました。僕に出来ることは何でもしましょう。モデル撮影に同行して、その時の情況と周囲の状況をルポにまとめたらいいんですね。それで、どこへ行くんですか？」
「ああ、小沢君の言うには伊豆あたりを回って撮影したいらしい。いい所が一杯あるらしいから。恋人岬や黄金崎や浄蓮の滝、天城トンネルを巡るらしいよ。明日にでも、うちに来てロケの詳細を打ち合わせしたいんだけど、どうだい？」
「わかりました、じゃ、明日お伺いします」