数日後、安倍社長は知り合いの小沢五郎というフリーのカメラマンを呼んで、自分の構想を話すのだった。
「小沢君、君、いろんな雑誌に写真を載っけてるだろ。どこにも所属していないタレントを知らないか？　モデルとしても、歌やダンスのできるタレントがいいな。できたら、うちの専属になってもらいたいんだ。うまくいけば、君にもサービスをするよ。今、名が売れていない方がいいな。
　これから育つようなのがいいな」
「へえ、社長、何考えるんですか？　そりゃ、いるにはいますが、でも、たいてい、あちこちに手がついてますよ」
「うん、そうだろう。出来たら、今は売れてない方がいい。うちの雑誌で名を売れば、いいんだから」
「うーん、なるほど。そんなのいるかな？　ちょっと待って。
　ああ、そうだ。あの子がいいかな。芸能界に興味があって、きれいな子なんだ。歌のレッスンも、ダンスもやってるよ。
　よし、よければ、その子をモデルにして、僕が写真に撮って、《週間マンデー》に掲載して、そこから名を売ったらどうでしょうか。時間はかかるが、いい子ですよ」
「そうか、よし、判った。君に任そう。出来たら、あちこちでモデルにして写真を撮ってよ。その状況を記事にして、雑誌に乗せよう」
「へえ、そんなことができるんですか？」
「まあ、任せてよ。いいコネがあるんだ。伊豆半島くらいを撮影ルポしようか」
「わかりました。日程を調整して、連絡します」