下田署ではさっそく、会社と実家に連絡した。
　やって来た会社の上司は、本人と確認したが、事情は分からないとのことだった。
母親は泣きながら、訴えた。
　昨夜、娘から携帯にメールがあったのだそうだ。
〝お母さん、ごめんなさい。会社でもプライベートでもいろんなことがあるから、もう、私、駄目なの。お母さん、ごめんなさい〟

　ただ、そのメールは発信者がなかった。非通知に設定されていたようだ。
　母親は、そのメールを見て、不審に思い、警察に届けようかどうかと悩んでいたのだった。
　でも、その事情はよくわからないとのことだった。

　ただ、黄金崎には心当たりがあった。娘が中学生の頃、家族でここへきて、感激したらしい。娘の思い出の地だったらしい。

　突き詰められた会社の上司は、しぶしぶ語ったのだった。
　どうやら会社でトラブルがあったらしい。
　会社の上司の説明では、お金を借りに来た顧客に対して法定よりも高い利率で貸していたらしい。法定の利率との差額は自分の懐に入れていたとのことだった。
　しかし、一介の女性社員がそんなことができるのだろうか？
　不審に思った下田署だった。金利の操作が、彼女一人でやったのか、それとも誰かにそそのかされたのか、判断する材料が見つからなかった。
　果たして、自殺か他殺か事故死か？

　結局、母親にあてたメールが決め手となって、下田署では自殺と断定した。
そしてこの事件は決着したのだった。