第六章　若鮎の成長

 森田社長の逮捕でアース企画は窮地に陥った。決まりかけていたイベント開催もキャンセルされ、以後の引き合いも無くなってしまった。
　どうするか、会社は解散の危機に陥ったのだ。
　ここで立ちあがったのは神田慶子だった。彼女は読日新聞の応援を得て、会社再建に立ちあがったのだった。
　少ない社員を集めて、彼女が言うのだった。
「森田社長の件は残念でした。でも、今まで順調に来たこの会社、イベント開催の仕事をここでやめてしまっていいんでしょうか？　もう一度、一から立ちあがろうじゃありませんか」
　賛同する社員が相次いだ。
「神田さん、あなたの言いたいことは分かるが、ここまで地に落ちたわが社の名声を取りもどすのは並大抵じゃないですよ。なんか策があるんですか」
「幸い、私たちを応援してくれる人はいます。あの読日新聞が応援してくれます。それに、ルポライターの朝見さんが私たちのことをいろんな雑誌に売り込んでくれます」
「わかりました。じゃ、みんな、もうひと頑張り、頑張ろうじゃないか。頑張ればきっとうまくいく。神田さん、あんたが社長になってください。わたしたちは精いっぱい協力します」
「ありがとうございます。精いっぱい頑張ります。みなさん、よろしく」 

　こうして、四万十川の若鮎が独立して、新しい道を歩き始めた。読日新聞も好意的な記事を乗せてくれた。朝見もいろんな雑誌に好意的に書いてくれた。
　そして、一年後、会社は再建を果たしたのだった。

 エピローグ

　奥田の、ァース企画の事件は解決した。朝見は池袋署、香川県警、宮城県警へお礼とあいさつに回った。いずれも浅見に感謝してくれた。新しいアース企画の神田社長、いや、成長した四万十川の鮎は感激してくれた。

　読日新聞は、事件の詳細をスクープして、島崎はご満悦だった。

　でも、朝見の気持ちは複雑だった。

　いつまでもこんなことをしていていいんだろうか、自問自答する浅見だった。

　警察や、新聞社は自分たちの仕事に邁進している。神田女史も自分の仕事に集中している。

　でも、自分の仕事は何だ？　一人のしがないルポライターなのだ。おまけに、ルポライター以外のことにばっかり、首を突っ込んでいる自分なのだ。

　悩みを抱える朝見だった。　

　朝見充彦シリーズの四作目が恰好がついた。朝見じゃないが、悪丸君もいつまでこんな本を書いてるんだい？
　ちょっと、いや、大いに考えさせられる毎日だ。
　さて、次なる事件はどうなるのかな？
　とりあえず、「天城峠の妖精」とでも題して、また、あちこちと回ろう