第五章　　　事件を追って　

　奥田が死んで、沢口が会社を辞めて、仙台で近藤と一緒にトラブルを起こした。
　そのトラブルは芸能プロ・Ｇから、神田にもたらされた。近藤が酔っ払って仲間に喋ったのだ。へえ、そんなことがあったのか、いろんなことに不審を抱く神田慶子だった。
　会社の慰安会で、どうして別行動で、道後温泉に向かったのか？　沢田に誘われたのだったのだ。でも、旅はまあ、楽しかった。川に落ちたけれど。
　途中の車の中で沢口が一言洩らしたのを思い出した。
「わたし、昨日は社長と一緒だったの。今日は遅く宿に来るみたいよ」
　どうやら、森田社長と不倫の関係にあるようだと思ったのだ。
　どうしてチェックアウト時に社長は誰にも事情を言わずに、一人でさっさと出かけたのか？　チェックアウト寸前にかかってきた電話は奥田の事故の連絡だったに違いない。でも、奥田が事故死したのをどうして教えてくれなかったのか？
　それから、どうして沢口は会社を辞めたのか？　やめるような気配はなかった。仕事上のつまずきもなかったと思われるのに。
　どうして仙台の野蒜築港なんかへ行ったのか。どうして、いつから近藤と付き合ってたのか？　おまけに芸能プロ・Ｇの近藤とだなんて。
　なんで芸能プロ・Ｇの近藤が相手なのか？
　確か、野蒜築港でのトラブルの前後、社長は行き先も告げずに出張してたわ。
　なんか関連があるのかな。

　いろんな疑問が頭の中を走馬灯のようによぎる、神田だった。
　どうしても不信感が消えなかった神田だった。
　どうしよう。四万十川で見た朝見の名刺、ルポライターをしながら探偵をしている朝見のことが頭に浮かんだ。
　かれなら頼りになるだろう。でも、面識はない。いきなり連絡するのも気が引ける。