やっと野蒜築港跡を捜して二人でうろうろしてもなにもない。
　と、そばに停まっていた車から、一人の男がおりてきた。
「やあ、近藤君と沢口君じゃないか。こんなところでなにしてるんだい？」
　びっくりして振りかえった二人の眼に森田社長が映った。
「あれ、社長じゃないですか！　こんなところで会うなんて！」
「いや、実は俺は明日、仙台市内で仕事があるんだよ。それで、ちょっと野蒜築港を見に来たんだ。君たちはどうしたの？　奇遇だね、こんなところで会うなんて。ああ、楽しい旅行ってやつかい。いいね、仲よくやってるんだね。どこ行くつもりなんだい？」
「僕たちは野蒜築港に行こうと思ってるんですけど、よくわからないんですよ」
「そうか、じゃ、案内してあげよう。僕の車についておいでよ」

　やっと到着した。
「ここだよ。僕はこれから仙台へ戻るよ。まあ、楽しくやってくれ。ああ、美味しいコーヒーをポットに入れて持ってるんだ。君たちと会ったのも奇遇だ。このボトルをプレゼントしよう。まあ、ゆっくりやってくれ」
「ありがとうございます。社長も仕事、うまくやってください」
　二人は社長に貰ったボトルのコーヒーを飲んでから、近くを散策した。