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　事件の数か月前、奥田慎二は高校時代の悪友と新宿のスナックで飲んでいた。
　久しぶりの再会ですっかり酔っぱらった奥田だった。
　友人たちと別れて、さあ、帰ろうとした奥田だった。その眼の先の方をを女連れの男が歩いている。
　あれ、あれは社長だぜ。何してるんだろう。おや、女は会社の女の子だ。何してるんだろ。興味を持った奥田は二人の跡をつけたのだった。二人は楽しそうに肩を並べて歩いている。実に楽しそうだ。
　なんと、あの二人、出来ていたのか！
　いぶかしく思う奥田だった。

　それから、奥田は二人の行動に気をつけるのだった。二人は時々、一緒に会社を終わり、そのまま飲みに行ったりしている。経理を調べると、領収書から費用が会社持ちであることが判った。
　おいおい、こりゃいかんぞ。会社を食い物にしてはいかんぞ。
　よし、俺がこの二人に引導を渡してやろう。
　そう考えた奥田は、ある時、社長に談判するのだった。
「社長、見ましたぜ。沢口女史とできてますね。密会現場を何度か見ましたぜ。写真も撮りましたよ。どうするんですか。口止め料でもたっぷりと、いただきたいですね」
　まさか、ばれてるとは思わなかった社長は吃驚して、
「おいおい、奥田君。困ったな。頼むから誰にも言わんでくれよ。頼むよ。悪いようにはしないから」
　とにかくその場を収めた社長だったが、心は怒りでいっぱいだった。恐喝めいたことをする奥田と見つかるようなへまをした自分と沢口に対して。
　これから、これをどう処理しよう。下手をしたら、自分も会社もおしまいだぞ。とにかく、自分に困ることをした二人、奥田と沢口を何とかしないといけないんだ。