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　高松署では自殺か他殺かの判断に苦慮した。捜査会議の席上、県警本部からやって来た大原警部が黒板に目をとめた。
「あれ、この朝見ってのはなんだい？　どうして名前があるんだい？」
「ああ、警部、昨夜現場近所をうろうろしていたレンタカーの借主です。一度事情聴取に行こうかなと思っています」
「そうか、君は知らないんだな。この東京北区の朝見さんてのは、お兄さんが検察庁の幹部でな、探偵として実績のある人なんだ。高松署でも過去の事件でずいぶんお世話になってるんだ。よし、事情聴取には俺が行こう。誰か、所轄から一人出てくれ」

　捜査会議で、とにかく朝見という男の事情聴取で何もなければ自殺として事件を収束しようということになった。一枚のメモが重要な因子となったのだ。筆跡鑑定の結果、男の筆跡だったのだ。

　さっそく、大原警部は朝見に電話した。
「もしもし、朝見さん、香川県警の大原です。お久しぶりです。ちょっとこちらの事件で事情がありまして一度お会いしたいんですが、いかがですか？　明日にでも」
　突然の大原警部からの電話でびっくりした朝見だった。詳しい事情は教えてもらえない。でも、なんかの事情があるに違いない。
「わかりました、お待ちしています。場所は分かりますか？上中里の駅の近くですが」
「大丈夫です。そこの所轄は滝野川警察署ですね。でも、あまり騒ぎを大きくしたくないので、何とかします。お昼過ぎに伺います。駅に着いたら電話します」
「わかりました。お待ちしております」