死因は溺死だった。特に外傷も見当たらない。高松署と香川県警は一応死体解剖に回した。
　その結果、微量の睡眠薬が検出された。
　どうやら睡眠薬で朦朧としていて、歩いているうちにお濠に落ちたのだろう。死後十時間とは経っていない。つまり、昨夜のことなのだ。
　それも近くを走る琴電の営業が終わった後のことだろう。
　高松署では近隣の監視カメラを当った。
　夜遅く玉藻公園付近を歩いている人はいなかったか、防犯カメラを調べても男は写っていなかった。
　ただ、夕方８時ごろ、公園のまわりをノロノロ走っている車があった。車のナンバーからレンタカーと判明した。松山で借りた車だった。
　調べると昨夜遅く高松駅で返却されていた。松山のレンタカー会社へ当たると、借主が判明した。
　東京都北区の朝見充彦という人物だった。ひょっとすると、何か関係があるのかもしれない。死んだ男を見かけたかもしれない。そう考えた捜査本部だった。

　死んだ男のポケットからは免許証、財布と一緒にメモが一枚出てきた。
　男は従業員十名の東京のイベント会社・アース企画の経理の社員、奥田慎二だった。
　メモには「ご迷惑をおかけしました。申しわけありません」とのみ書かれていた。自殺か？　それとも他殺か？