遊覧船「さこや」の船頭が準備をしているとき、沈下橋を歩いてくる若い女性がいた。夏の四万十川の天然鮎のような可憐な女だった。後から、少し離れてもう一人の女が歩いていた。
　へえ、きれいな女の子だな、まるで四万十川の若鮎みたいだと見とれていた船頭の目の前で、女が四万十川に転落した。きれいな川の流れに気を取られて足を滑らせたのだった。　びっくりした船頭は１１９番通報をしてから自分の船を出して、鮎のように水中でもがく女を助けたのであった。
　幸い、季節は夏だ。冬だったら凍えてしまうところだったが。助けられた女はずぶぬれになっていたが、けがはなく、無事だった。
　あわてて飛んできたもう一人の女性は仲間だった。二人は一緒に旅していたのだ。