プロローグ

　２００Ｘ年の初夏のある晴れた日だった。
　ここは日本でも有数の清流が流れる四国の四万十川だ。有名な不沈橋のたもとだった四万十川は、日本で最後の清流なのだ。

　津野町不入山に端を発し、中土佐町、四万十町、四万十市を流れる四国最長の大河（全長１９６km）。『最後の清流』として知られ、火振り漁や柴づけ漁など現在でも伝統的な漁が行われている。上流から下流に数多く残っている沈下橋は、欄干がなく川の増水時に水面下に沈むことで流失しないように作られた橋で、今も住民の生活道であるとともに、四万十川の風物詩となっている。

　四万十川の沈下橋とは、増水時に川に沈んでしまうように設計された欄干のない橋のこと。
　河口からいちばん近い沈下橋は、佐田（今成）沈下橋で、橋を渡るときの気分はそう快なのだ。
　他に、四万十市内だけでも、深木、高瀬、勝間、口屋内、岩間、長生、中半家、半家の沈下橋があり、いずれも四万十川らしい、川と人との関わりの感じられる風景が見られる。
四万十川最下流で最長の沈下橋。もっとも観光客になじみのある沈下橋でシーズン中は多くの観光客で賑わいるのだ。
　その沈下橋を一人の若い女性が歩いていた。