第六章　因幡の白兎から八神姫へ

　それから一か月ほどたった。朝見のもとに一通の手紙が届いた。因幡の白兎こと、小野由紀からだった。
「朝見さん、その節はありがとうございました。堀越警部さんの御口添えもあって「被害者の会」での私たちの立場も上々に運びました。本当にありがとうございます。
　そして私と山田は結婚することにしました。今は輪島に来ています。彼のお父さんと一緒に住む予定です。かれも輪島で仕事を見つけて順調に生活しています。つきましては、今度の日曜日、私たちは二人だけで結婚式を挙げようと考えています。ぜひ、朝見さんにご出席していただきたいのですが、いかがでしょう。連絡待ってます」
　やあ、いい頼りだ。朝見もうれしくなった。ぜひ、出席しよう。

さっそく、由紀に電話した。
「やあ、小野さん、おめでとうございます。わたしも能登あたりには一度行ってみたかったんです。土曜日の夕方には、そちらにお伺いします。よろしく」
「わあ、うれしいわ。みんなで待ってます。こちらに着いたらお電話ください。待ってますわ」

　二人とも楽しく過ごしてるみたいだ。
　そうして朝見は何とかして能登半島のルポに行こうと決めたのだった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊

　翌日、朝見は日本紀行まで行くのだった。
「編集長、今度、能登をルポしたいんですけど。輪島の朝市なんかどうですか？　能登海岸なんてのもいいと思いますよ。きっと面白いと思いますよ」
「うん、わかった、いいよ。行って来て。でも、まあ、よくも次々と思いつくもんだね」
「いや、これが僕の仕事なんですよ。じゃ、ルポしてきます。よろしく」

　東京から能登半島に行くのは空路がいちばん早くて楽だ。
　土曜日、午後の便で羽田から小松空港へ朝見は飛んだ。着いたのは午後二時だった。そこでレンタカーを借りる。ここから能登半島をルポするのだ。