二人の事情聴取が終わってから、朝見は二人に会った。
　堀越警部が付き添っていた。

「無理言ってごめんなさい。わたしは事件のことを聞きたいんじゃないんです。山田さんも興味あるかと思いますが、因幡の白兎のことなんです。僕、あの白兎海岸での事故のすぐ後に鳥取県の東条湖にいまして、地元新聞の報道記事を見たんです。あの時あなたに、インタビューした記者は僕の知合いなんです。ワニと和爾と小野の話を聞きたくて、大津まで行ったんです」
　そんな話が出るとは思わなかった由紀はびっくりした。あの時の話題なんて！

「そうなんですか。いいですわ。わたしの知ってることはすべてお話します。ワニでの事故もきつかったけど、小野町での事故も大変でしたわ。でも、和邇一族のこともよくわかったし、小野の小町の生まれ故郷も分ったし、結果的に山田さんとも会えて楽しい、有意義な一年でしたわ」

　そして由紀は自分のこと、和爾氏のこと、小野氏のことをしゃべったのだった。

　話を聞いてすっかり感激した朝見だった。堀越警部も山田も感銘を受けたようだった。

「ありがとう。これで僕の気持ちも収まりました。ついでと行っては何ですが、今度の事件にはもう、お二人は関係ありませんよ。せいぜい、調書をとってサインするかどうかですね。ご心配なく。それからＫ商事の被害者の会へ連絡した方がいいですよ。そのうちに、Ｋ商事の件も清算されるでしょうから。何か困ったことがあれば、できるだけお手伝いしますよ。多分、井出警部も堀越警部も後押ししてくれるでしょう」

　それを聞いて感謝する山田と由紀だった。