由紀はすべてを話した。

　ーー因幡のワニ海岸でのこと、福島県小野町のこと、山下の身辺を興信所に頼んで探っていたこと、その時、同じ境遇の山田浩二と知合ったこと、山下のよく通うスナックをさぐりだして、そこへ勤め出したこと、出雲で会うことを約束して、山田といっしょに行ったこと、出雲で出会ったこと、事件のときは日御碕の駐車場にいたことなどを。ーー

「でも、不思議だわ。なぜ、私が因幡の白兎ってご存じだったんですか？」
「ああ、それは、朝見っていうルポライターからの情報です。あなたがワニ海岸で事故に遭った時の現地新聞の記事を見て、滋賀県大津まであなたに会いに行ったらしいですよ」
「ああ、そうなんですか。そういうことなら、私も、その方に一度会ってみたいわ」
「そのうち、お会いできるでしょう。こちらとしても協力しますよ。ところで、その山田浩二さんってどこに住んでいらっしゃいます？　お会いしたいですね」
「わかりました、明日、山田と一緒にまたここへまいります」

　とりあえず由紀は池袋署から帰った。
　そして山田と連絡をとったのだった。
「僕たちに嫌疑が掛かってるのかな。ちょっと嫌だな。でも、僕たちは何にもしてないんだから大丈夫だね」
「そう思います。とにかく明日、また行きましょう」

　翌日、午後一時頃、二人は池袋署へ赴いた。
　池袋署では昨日の刑事二人と島根県警の二人ともう一人若い男が待っていた。
　急遽、島根から駆けつけてきたのだ。朝六時過ぎに出て空路、十一時過ぎに着いたばかりだった。
　堀越警部が二人に紹介した。
「ご苦労様です。こちらは島根県警の井出警部と秋本刑事。けさ着いたばかりです。それからこちらが昨日言っていた朝見さんです。因幡の白兎のことは朝見さんに教えてもらったんです」
「やあ、あなたが小野さんですか。さすが因幡の白兎ですね。僕は朝見と言います。和爾の海岸から大津の小野のＫ史跡、和邇のあなたの実家まで行ってきた男です。警察との話が済んだら、少し時間を下さい。池袋署の堀越警部には許可を貰ってますから。それから堀越さん、少し差しでましいですが、このお二人は事件と関係ありませんよ。だって、相手は中年の男だったんでしょう」
　そう、二人を弁護する朝見だった。