「それに僕が思うに、若い女性、きれいな女性が来るところはきっとどこかの盛り場ですよ。彼女、きっとＫ商事に恨みを持ってますよ。山下って人が東京でどのへんで飲んでたか調べたらきっと接点がありますよ。堀越さん、その辺は池袋署でお手伝いしてあげたらどうですか。ひょっとしたら出雲に同行した女性が彼女かもしれない」

　井出警部と秋本刑事ともども堀越警部も驚いた。
　井出警部が言う。
「へえ、朝見さん、すごいことを知ってますね。なるほど、一理ありますね。行き詰っている現状からみて、確かに当たってみる価値はありますね」
「そうですね、やってみましょう。井出警部、われわれが主体となって捜査しますよ。時間がかかると思いますから、いったんは島根にお帰りになった方がよろしいかと思います」」
　そういう堀越警部だった。

　池袋署では山下の行動を徹底的に探った。その結果、新宿のスナックを探り当てたのだ。どうも週一回は通っていたらしい。
　さっそく捜査に赴くのだった。けっこう若いホステスがいるよ。席に着いた捜査員はやって来た女に聞くのだった。
「こんばんわ、ちょっとお聞きしますが、因幡の白兎さんって渾名の人、この店にいますか？」
「あら、因幡の白兎って、私のことなんですけど。どちらさんでしたか。どうして知ってられるんですか。あまりお見かけしないお方ですけど」
「ああ、あなたですか。実は私たちは池袋警察署のものなんです。因幡の白兎さんにちょっとお聞きしたいことがありまして。よかったら少しお話を聞かせてください」
　いつかは警察が来るだろうと覚悟はしていた由紀だったが、なぜ池袋署からなのか、なぜ出雲からじゃないのか、と少し驚いた。
「いいですわ。いつかは来られると思ってました。山下さんの件ですね。少しお待ちください。仕度してきますから」

　池袋署での任意捜査に由紀は全面的に協力した。いつかは復讐しようと思っていた山下が何者から殺されてしまったのだ。彼女の目的は終わってしまったのだ。