出雲署では近辺の監視カメラを当った。
　被害者の男はタクシーで若い女と一緒にやって来ていた。タクシーの運転手によれば市内のホテルから直接日御碕へやって来たようだった。
　そして一人になった男はもう一人別の男と一緒に日御碕灯台の方向へ向かったようだった。同行の女はどうしたのか。遊歩道の端っこで岩場に出れば監視カメラの眼は届かない。
　被害者を誘った男も監視カメラに写っていた。車で一人やって来て、被害者の男に接触したようだ。
　車はレンタカーと判明した。レンタカー会社を当ると、男の素性が分った。東京の人間で、市原という名の男だった。
　被害者と一緒にいた男はどうしたのか。夕方レンタカーを返却したことは分かったが、その後の足取りは判明しない。レンタカーを借りたときに示した免許証には東京の住所があった。
　県警本部から警視庁を通じて免許証の住所にもあたったが、そこには誰も住んでいないのだ。住所は都内のある区役所の住所だった。ひょっとしてこの免許証は偽造なのか。

　死んだ男は東京のＫ商事の経営者だった。昨夜、東京からやって来て出雲市内のホテルに宿泊していた。どうやら何かの仕事だったようだ。男は二人連れでやって来ていた。警察はホテルにも当った。同行の男は加藤といった。彼は当日の朝、チェックアウトして東京へ戻ったようだ。

　被害者がタクシーで一緒に来た女の素性も行方も分らない。
　どうやら事件の鍵は東京にあるようだ。

　出雲署に設けられた捜査本部では、県警の井出警部が指揮を執っていた。
「とにかく、Ｋ商事ってどんなのか、調べよう。うちの山本君と所轄の秋本君、東京へ飛んでくれ。それからレンタカーの男を徹底的に洗ってくれ。市内の監視カメラを徹底的に洗おう」
「わかりました。ところで井出警部、第一発見者は、あの朝見さんですよ。以前、江津の事件でお世話になったことのあるひとですよ」
「へ、そうか。また彼か。もう東京へ帰ったのかな。よし、俺も東京へ行こう」