四章　出雲の国で

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　小野由紀が福島県小野町で事故に遭った翌年の春、島根県の日御崎海岸だった。
石積みの灯台では東洋一といわれている「出雲日御碕灯台」はさすがだ。
　遊歩道からの日本海は絶景だ。なんと言う岩かしらないが奇妙な石の海岸だ。
　その遊歩道の下の海に、男が一人沈んでいた。ちょうど遊歩道を散策中だった若い男が見つけたのだ。慌てて、１１０番した。
「もしもし、日御碕の遊歩道のところで人が沈んでます。なんか死んでるみたいです。すぐ来てください」
「すぐ行きます。現場を荒らさないようにしてください」

　やがてやって来たパトカーと救急車だった。救急隊員は一目見て、男は死んでいるのを確認した。
「あなたが第一発見者ですか。ちょっとお話を聞かせてください。ここじゃ何ですから、日御碕駐在所へ行きましょう」
　駐在所で出雲署の刑事が第一発見者の若い男に事情を聴くのだった。
「僕は何にもわかりませんよ。ただ、遠くから中年の男二人が何やら話しながら歩いてるのを見ました。なんか変な雰囲気でしたね。遠くからだったので人相等はよくわかりません。そのうちの一人が被害者だったんですね。僕は、そのあと、岩場の先まで行って写真を撮ろうとしてただけです。そしたら海のなかに人が浮かんでいるのに気がついたんです。あ、僕は東京から来たルポライターです」
　渡した名刺を見て刑事が驚いた。
「あれ、ひょっとしたら、あの朝見さん？　わたしは以前江津署でお世話になったことがある秋本です。お忘れですか。いまは、出雲署にいるんですよ」
「ああ、秋本さん、思い出しました。奇遇ですね。あの時はお世話になりました」