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　翌日、加藤は怒りを呑みこんで、山下と一緒に顧客のもとへ同行した。

　今回のターゲットは出雲の田舎の資産家だった。もう７０歳を過ぎていた。子供が一人、独身の女性だった。男は娘に遺産をたくさん贈ろうと考えて、Ｋ商事の甘い罠にはまったのだった、預貯金の大半、二千万円ほどを拠出し、あわよくば倍増しようと考えていたのだ。投資はＫ商事が行う。外資の投資、為替投資、仮想通貨への投資を一任するのだった。利益が出ればよし。損失が出ればすべて資産家が負う。商事の経費もすべて資産家持ち。拠出金が無になれば、不動産で補填する。遺産の取り扱いもすべて商事に一任する。

　こんな無茶苦茶な契約でも、田舎の資産家、何も知らない資産家は騙されたのだった。

　同席した弁護士の信用は絶大だった。地元の弁護士協会の保証もある。弁護士がそう画策したのだ。言葉巧みな弁護士の話に、資産家は悩むことなく調印したのだった。
　そんなことがあるか！　と思うのが普通の人の感覚だが、世の中にはいろんなことが起こりうるのだ。
　ホテルへ戻った二人は、首尾よくいった仕事に満足したのだった。

「明日、俺は因幡の白兎と会うんだよ。もう君はここでは必要ないよ。また、東京の事務所で会おう」
「因幡の白兎？　なんだいそれは。ああ、最近あんたが仲よくしてるといううさぎちゃんか。わかったよ。じゃ、明日の朝、俺は東京へ帰る」
　翌日、加藤は早朝に宿を引き払って東京へ戻った。
　山下は、ホテルで由紀を待つのだった。これからどうしよう、今夜はどうしようと思案しながら。