第三章　Ｋ商事

１

　小野由紀は山田浩二と共同で、Ｋ商事の山下哲治の行動をさぐった。そして彼がよくいくスナックを探し当てた。
　そして由紀はその店に移って山下と接触するのだった。
「こんばんわ、わたし、つい先日からこのスナックで働いているのよ。由紀って言います。わたし、実は因幡の白兎なんです。よろしくお願いします」
「へえ、因幡の白兎なんだ、ああ、本当に白兎みたいだね。うさぎちゃんって呼んでいいかな」
「いいですわ、今後ともよろしく」

　こうして、由紀は山下とけっこう仲良くなったのだった。男の方はかわいいスナックの女として、女のほうは復讐すべき憎い男として接触するのだった。

　しばらくしてから、山下が誘った。
「今度、俺は仕事で出雲に行くんだ。出雲大社の近所までね。どうだい、一緒に行かないか？　因幡の白兎なら、大国主命と出雲大社って縁があるだろ」
「出雲ですか、いいですねえ。大国主命のところですねえ。いいわ、一度行ってみたかったの。「国引き神話」の舞台とか、日御碕なんかも」
「よし、連れてってあげよう。でも、俺は仕事で仲間と行くんだ。別々に行って、俺の仕事が終わったら、会おう。そこからあちこち散策しようぜ。
　来週、水曜日に東京を発って、木曜日に用事があるんだ。終わったら、仲間は東京へ帰る。俺はホテルで待ってるよ。金曜日のお昼ごろ、ホテルで会おう。いいね」
「わかりました。来週、金曜日のお昼に、ホテルへまいります」
　二人はホテルの名前とか会う時間とか打ち合わせるのだった。