彼、山田浩二は石川県輪島市の出身だった。山田浩二は、父親の遺産をすべてＫ商事に騙し取られたのだ。父親は一人で細々と輪島で暮らしているのだった。
　男は一人で生計を立てるため、Ｋ商事への復讐の念に燃えて東京に出て来たのだ。
　そして二人はそれぞれが蒙った被害について情報を交換するのであった。

２

　東京にある商事会社、Ｋ商事は為替運用、仮想通貨の運用、外国株式の運用による資産倍増をうたう会社だった。インターネットで宣伝したり、生贄になりそうな人たちに宣伝資料を送付して自分の言うことを信用してくれそうな人を探すのだった。
ーー資産を増やしましょう！　資産運用を私どもにお任せください。一年で十パーセントは最低、増やしますーー
　こんな文句、普通に考えればあり得ない話だ。普通の感性を持っていればね！
でも、世の中には、こんな文句につられる人が結構いるのだ。運用を任した人たちは、ほとんどが損失を被っているのだ。
　はたして、本当に資産運用をしていたのか、それとも何にもしていなかったのか。資産運用を委託した人たちはほとんど全員が被害を受けていた。
　果たして騙す方が悪いのか、騙される方がわるいのか？
　そしてこんなふうにしている会社や個人はけっこういるのだ。