第一章　　和邇をさぐる

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　淤岐ノ島の事故から数ヵ月たったある日、朝見充彦は鳥取県の東郷湖畔にいた。
　倉吉の大島翼の父の死の真相が解決したあと、ちょうど一年たっていた。脇本優美と大島翼と西日本海新聞の萩原から一周年記念に招待されたのだ。
　朝見は喜んで招待に応じた。今回も東郷湖畔の長生館という温泉宿に宿泊したのだった。
　前に倉吉へ来た時のように、朝見は岡山でレンタカーを借り、東条湖へ来たのだった。到着が予定の時刻よりも少し早かったので、倭文神社へ行ってみた。
　倭文神社は安産の神として崇敬されているのだ。
伯耆国の一ノ宮。社伝によれば大国主命の娘の下照姫命が出雲から海路御着船、従者と共に現社地に住居を定め、当地で死去されるまで、安産の指導に努力され、農業開発、医薬の普及にも尽くされたといわれている。　由緒ある神社なのだ。
　ここは山の中の小さな神社だ。誰もいない。境内には落ち葉を炊く煙が三本。宮司さんが暇そうに社務所にいる。たぶん、何でこんなとこに参拝に来るんだい、変なやつとでも思っているのかな。しかし、いい雰囲気だ。さすが伯耆の国の一ノ宮として、古くから織物の神さま。安産の神さまとして信仰される神社だ。鬱蒼とした自然林に守られるも本殿もいい。
　心安らぐ思いがする。神社の手前には安産岩がある。ここにお参りすると安産で生まれるらしい。
　境内の途中から、丘を登ると経塚がある。急な歩きにくい山道を歩いていくと、発掘現場があった。柵で囲んであるだけだった。