「そうですか、わかりました。私に出来ることは何でもしましょう。でも、もう夕方、五時前ですよ。これからどうするんですか？」
「わたし、実家が滋賀県の長浜なんです。今、長浜に帰省してるんです。ここからバスで湖西線で新旭駅へ出ようと思ってるんです。そこから電車で帰ろうと思ってるんです」
「ああ、長浜ですか。いい所ですね。でも、その足じゃ大変ですよ。よければ僕が車で送りましょう」

　いったんは躊躇した江藤だったが、やっぱり足首が痛くて歩くのが辛いのだ。
「そうですか、お世話になっていいのかしら。とても嬉しいわ。でも、まだルポが続くんじゃなくって」
「いいんですよ、気になさらなくったって。明日、また、出直します」
「じゃ、悪いけど、お願いします。母には、長浜城近くまで出迎えを頼んでおきますわ。本当にいいのかしら」

　二人は朝見のソアラに乗って長浜へ向かった。
　ここから長浜は意外と近いのだ。一時間ちょっとでついた。
　途中、江藤は朝見にすべてのことを話した。

　――彼が、本多という彼が、池袋で交通事故に遭って死んだこと。事故の前に酔っ払ってバッグなどを強奪されたこと。自分には、どうしても単なる交通事故とは思えないこと。彼の四十九日を迎え、揺れる心にケリをつけようと鯖街道を巡ったことなどを。本多とは不倫の関係だったこと。二人で、舞鶴に行ったとき、何かあったら何かの役に立つといってネックレスを貰ったこと。そのネックレスは今、東京の自分の部屋に大切に仕舞ってあること。
　どうしても単なる交通事故とは思えないこと。四十九日を迎え、心にケリをつけようと鯖街道を巡ったことなどを。ーー

　運転しながら話を聞いた朝見は、大いに興味をそそられるのだった。
　十八時半ごろ、長浜へ着いた。朝見は長浜城近くの駐車場まで美樹を送った。