杉田玄白は、尚学の気風に富み、人材の育成に注力した若狭小浜藩の藩医であり、前野良沢、中川淳庵とともに、江戸小塚原で行われた刑死体の解剖に立ち会ったとき、持参していたオランダの医学書「ターヘル・アナトミア」の解剖図の正確さに驚き、翻訳を決意し、「解体新書」を完成させたのだ。
「医食同源」や「養生七不可」など多くの教えを遺され、日本の近代医学、あるいは近代文化の先駆者なのだ。

　そろそろ、ホテルへ戻ろう。いずみ町商店街に美味しそうな料理屋があったな、今日はいつもと違って、美味しい夕食をとろう。
　戻って料理屋に入ろうとしたとき、鯖街道のプレートのそばに一人の女が立っていた。
　なんか、寂しそうな、愁いを含んだ姿で立ちすくんでいた。
　なんだろう？
　なんか曰くがありそうだな、でも、まあ、いいか。
　朝見は美味しい魚料理に舌鼓を打ってホテルに戻った。 

　翌朝、ふたたび、さば街道資料館へ向かった。凄いね、鯖街道の資料がすっかり揃っている。ここで貰った資料、これだけあれば、今回のルポは終わったようなものだ。
　すっかり満足して資料館を出た。
あれ、昨日の女がまたいたよ。何なんだろう。ちょっと気になるよ。

　朝見はホテルを引き払い、小浜港に向かった。
　若狭小浜お魚センターの駐車場に駐車し、近くを散策するのだった。
　おお、すごいね、この海鮮市場は。地元の漁港にその日水揚げされたばかりの鮮魚をはじめ、干物や海産加工品などを販売する海鮮市場。素晴らしい。みな、美味しそうに見える。
しばし見学する。いいね。おばま食文化館もいい。漁港もいいね。
　しばらくうろうろしてから、朝見は、一休みしようと、岸壁に腰を据え、しばし海を眺めるのだった。いいなあ。
　お、そばに子供連れの夫婦が来た。子供は市場で買いこんだのか、魚の干物を持って齧っている。いいなあ、いい景色だ。親子連れっていいね。
　そこへ子供の悲鳴がした。
　ハッとして振り向いた朝見の眼に、干物をくわえて飛び去るトンビが一羽。ああ、トンビに油揚げをさらわれるって、このことか。
　あーあ、かわいそうに。
　でも、子供にとってはいい経験になったんじゃないかな。びっくりしただろうけど。いつまでも小浜の印象が残るよ。