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　本多が名古屋へ転勤してから会うことがなくなった江藤美樹は心配でならなかった。
　彼との連絡はいつも彼からの一方通行だった。携帯の電話番号は知っていたが、下手に電話すると、彼の奥さんに自分たちの関係が明るみになってしまうのを恐れたのだ。
　悶々とするうち、ある夜のテレビのニュースを見てびっくりした。
　そこには交通事故死した男性の顔写真が映っていた。ああ、彼だ。美樹は本多が死んだことを知った。
　これが彼の言っていた「何かあったら」なのだろうか？
　遺品にあったという写真、鯖街道の碑の前で映っている白い服の女って、自分のことだ。
でも、彼女は、警察に届ける気にはならなかった。何か事故以外のことがあるような気がしたのだ。
　彼が贈ってくれたネックレス、何か関係があるのだろうか？ 

　彼の葬儀の日、葬儀会場の近くへ行ってみた江藤だった。そこには明らかに刑事と分かる男がうろうろしている。
　彼の霊を慰めたい、彼の死んだ事情を知りたい。何とかならないのか、毎日を悶々と過ごす江藤だった。
　どうしたらいいのだろう。誰に相談したらいいのか？　警察は論外だ。
　ふと、頭に浮かんだのが、ときどき職場に現れるルポライターだった。ルポライターなのにいろんな事件に首を突っ込む男だ。
　だけど、直接連絡する手段がない。どうにもならないよ。誰にも相談できない。
　そして、自分はどうしてこの後を過ごしたらいいのか？

　もともと日陰の女として過ごしてきた江藤だった。
　自分のためにも、この生活、この苦悶に決着をつけなければならない。
　苦悩するうちに、彼の四十九日が近づいてきた。そうだ、鯖街道を旅しよう。彼の慰霊のために。
　江藤美樹は、会社に長期の有給休暇を申請し、まず、滋賀県・長浜の実家へ向かった。
　そこを拠点にして鯖街道散策を慰霊の旅にしよう。
　そして、自分の生活にケリをつけよう。
　新しい人生をはじめよう。