入口にある土産物屋さんを冷やかす二人だった。「お、うまそうだな、本当かな？　どんなんだろう」
「お客さん、美味しいですよ。どうぞ、試食してみてください」
　売り子の若い女性に誘われて試食した桔梗信玄餅は美味だった。山梨県で一番売れているお菓子だそうな。本当かいな。

県立美術館、ここもいいね。
　クリスタ・ミュージアム。ここも入場料は５００円だ。見るべき人が見ればすばらしいんだろう。併設されているミュージアムショップ。数百万円単位の水晶の原石なども飾ってある。
　店内には若い女性のお客がけっこういる。

　うろうろしてるうちに、桜井の携帯が鳴った。総会屋からの連絡だった。
「あ、俺だ。うん、うん。わかった。じゃ、よろしく頼むわ」
　そして市川に向きなおって、
「すまん、市川君、俺はちょっと急な仕事が入った。これからすぐに東京へ帰らねばならん。相棒は二時ごろ、甲府駅で待ってるそうだ。すまんが、それまでどこかで飯でも食って待っててくれ」
「わかりました。のんびり待ってます」 

　午後二時過ぎ、甲府駅前で待つ市川の前に一台の車が止まった。
　中年の男がおりてきた。
「やあ、市川さんですか、私、一緒に来る予定だった、加藤です。さあ、行きましょう」
「ああ、市川です。よろしく。とりあえず私は韮崎へ行ってみたいんですが」
「いいですよ、行きましょう」
　こうして二人は韮崎を散策した。韮崎市内にもいろんな名所・旧跡がある。じつにいい所だ。
　最後に新府城址へと行く。幸か不幸か、周囲には誰もいない。そして、油断した市川を殴打し、気を失ったところを絞殺したのだった。
　そして中央道を諏訪湖ＳＡまで行くのだった。そこで仲間の車に乗り換え、東京へ戻ったのだった。

　韮崎署の捜査は不首尾に終わった。東京、池袋の事件と関連があるなど、誰も思いもよらなかった。それは池袋署でも同じだった。共通点はいずれも盗難車だったということや、高速道路のＳＡで犯人は別の車に乗りかえて逃走したことだけだった。
　本多と市川の接点も見つからなかった。
　しかも盗難車は大阪と横浜だ。関連があるとはおもわれなかった。手口も交通事故に見せかけたのと殴打・絞殺によることの違いがあった。
　どうにもならなかったのだった。