第一章　　永遠の別れ

 　２００＊年の八月のある夜だった。
　東京・池袋駅近くの路上、トキワ通りを酔っ払った男が歩いていた。
　その後ろからそっと後をつける一人の男がいた。そして、何ごとか話しかけて、近くの公園に男を連れ込んだのだった。
　酔っ払った男は、つけてきた男に殴られ、気を失ってしまった。そして財布や携帯の入っていたバッグを強奪されてしまった。残ったのはポケットの小銭入れが一つ。どうしようもない。
　やがて気がついた男はふらふらしながら、近くの自販機でペットボトルの水を買った。少しでも目を覚まそうとしたのだ。それから警察に行こうと思ったのだった。

　朦朧とした目であたりを見廻した男は、道の反対側の少し左の方に赤い照明を見つけた。ああ、あそこが派出所かな、男はふらふらと道路を渡った。
　その時、後方で停車していた車が、突如、猛スピードで突進してきた。そして男は跳ねられたのだ。男は数メートルほど跳ね飛ばされ、動かなくなった。
　事故を起こした車は、いったん停車して、男の状態を確認したものの、男をそのままにして走り去った。
　事故に気付いた近くのコンビニの店員からの１１０番で救急車とパトカーがやって来た。
「交通事故です。トキワ通りです。人が倒れてます。ひき逃げみたいです。すぐ来てください」
　男はすぐに病院へ運ばれたが、死んでいるのは明らかだった。