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　宮津市役所に勤務する綾香は読日、天橋立の松の間を自転車で通勤するのだった。
　以前、朝見は天橋立と籠神社のルポに訪れていたのだった。綾香の案内で籠神社の海部宮司に、アマテラスの命の話を聞いたのだ。
　その時、伊根の海で事件があったのだ。
　綾香は、観光船の船長の父親と静かに暮らしていた。家の近くの籠神社の海部宮司とも親しくして、静かに暮らしていたのだった。
　綾香は前と同様に、毎日、天橋立を自転車で市役所まで通勤しているのだった。
　ある朝、いつものように自転車で軽やかに松林を走る。いい気持だ。この道は。もう何年も通っているのにいつも新鮮に感じられる。
　天橋立神社を過ぎる。このあたりで、こんな海のなかの中州に、なぜか真水が湧いているのだ。名水の一つになっている。美味しい水だ。
そこを過ぎて、ふと、海に目をやると、綾香の前の海に、男が一人浮かんでいた。
　ちょうど岩見重太郎の碑のところだった。
　ここは剣豪として名高い岩見重太郎が、父の仇として広瀬軍蔵、鳴尾権三、大川八左衛門の三人の仇討ちをしたと伝えられている場所なのだ。
　この場所には、仇討ちの試し切りにしたといわれる石が現在も残っているのだ。
　不審に思った綾香は近づいてみて、男が死んでいることを知った。
　びっくりした綾香は、携帯を取り出し、宮津警察署へ電話した。　
「もしもし、天橋立の沖の海岸で男の人が死んでます。はやくきてください。ここは岩見重太郎仇討ちの場所の近所です」
「すぐ、行きます。誰も近づけないように、おねがいします」
　やがてやって来た警察と救急隊だった。
　やって来た警察は刑事課・鈴木巡査部長だった。二人は知り合いだった。
「やあ、神田さん、ご苦労様です。あなたが発見者ですか。よろしく｣ 

　救急隊は死亡を確認した。それから警察は周囲の捜索を開始したのだった。
　ここは岩見重太郎が父の仇討ちを遂げた場所のすぐ近くなのだった。