第四章　宮津・知恩寺

　この前の九州大分・国東のルポのまとめに苦労していた朝見の携帯が鳴った。
　仕事を中断された朝見は、京都・宮津の神田綾香からのメールに驚いた。以前、天橋立を取材に行ったときに知合った市役所の女性だ。へえ、珍しいな、彼女から連絡があるなんて。
　宮津の神田さんか。一瞬、頭の中に宮津、天橋立の光景がよみがえった。
なつかしいなあ。天橋立はもちろん、素晴らしい。
でも、天橋立から伊根湾を抜け、丹後半島一帯は実にいい所だ。　道の駅「舟屋の里伊根」からみる伊根湾はきれいだ。
　青い海、切り立った岩場。日本海の海の青さは格別だね。蒲入という海岸もいい。丹波天橋立大江山国定公園だよ。丹後松島も美しい。
屏風岩もすごいね。こんな風に岩が削られて残るなんて、自然の猛威には頭が下がる。
　そばまで行きたかったけど、はるかに下だ。立岩も、すごいな。
　隣の間人皇后・聖徳太子母子像へとわたる橋とともにいい風景だ。白い砂浜の右手にも奇岩がそびえている。高さ二十メートルという巨大な岩が海に突き出している。その前に竹野川の清流がぶつかり、海へと流れ出す。一枚岩柱状摂理の玄武岩の姿は圧巻だ。
　丹後半島の景色が頭をよぎる。 

　頭の中の光景を振り払って、神田綾香のメールを見た朝見はまたも驚いた。また彼女が事件に巻きこまれていたのだ。何とかできないかという相談のメールだった。
　さっそく電話した。
「やあ、神田さん、お久しぶり。どうしました。なにが起こったんですか？」
「あ、朝見さん、天橋立で事件が起きたんですよ。私が第一発見者なんです。でも、なかなか解決しなくて、私、憂鬱なんです」
「わかりました、神田さんが知っている限りのことをまとめて、添付ファイルで送ってください。それを見て、僕に出来ることは、お手伝いしますよ」
　それからしばらくして届いた長文の資料から判明したのは次のようだった。