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　気がついてみると真夜中だった。周囲は真っ暗だった。
　そこは、亀岡文殊の駐車場から本堂へ行く途中のお堂だった。
　そこの鳥居の前に寝ているのだ。
　河野氏は、はっと、思い出した。麻生氏の息子が言っていたことを。
　ポケットをさぐると、紙切れが一枚入っていた。
　そこには『文殊の呪い』、『文殊にも慈悲はある』とあった。
　ああ、麻生社長に対する謀略が思い出された。
　自分は、助かったのだ。九死に一生を得たのだ。
　過去の悪行はいつまでも祟るんだ。何も、誰にも言うまい。
　今回の事情は、一人自分の心のうちに秘めておこう。
　とにかく、この地を離れなくてはならない。
　河野氏は、暗い夜道をよろよろと歩きだし、何とかＪＲ高畠駅までたどり着いた。
　２２時すきの山形行の列車に間に合った。
　そして山形市内のビジネスに宿泊して、次の日、やっとのことで仙台まで帰ったのであった。
　このまま、仙台でおとなしく一生を過ごそうと決意して。