そのあと、朝見は残りの取材を続けた。
　一旦海岸線まで出て、大分空港の先で安岐の谷へ入る。
　しばらく走って瑠璃光寺へ行く。ここもいい。この先には、三浦梅園の屋敷がある。
　川に沿った田染耶馬もいいよ。ここを過ぎ、 鍋山摩崖仏へ。
　ここは長い石段を上る必要があったが、いい所だ。
　真木大堂もいい。平安から中世にかけて花開いた六郷満山文化の栄華を色濃く残す本尊阿弥陀如来坐像、不動明王立像、大威徳明王像、二童子立像、四天王立像の９体の平安仏が残されている。その先が有名な熊野摩崖仏だ。少し有名すぎてるかな。山道を結構歩く必要がある。
　再び真木大堂を通って元宮摩崖仏を見て富貴寺へ行く。ここもいいね。
　富貴寺は平安時代に宇佐神宮大宮司の氏寺として開かれた由緒ある寺院だ。
　中でも阿弥陀堂(いわゆる富貴寺大堂)は、宇治平等院鳳凰堂、平泉中尊寺金色堂と並ぶ日本三阿弥陀堂のひとつなのだ。現存する九州最古の木造建築物であり、国宝指定されている、まさに『仏の里くにさき』を代表する文化財なのだ。
　ここから両子寺を横目に国東へ戻る。

　朝見は、その夜、白砂青松の海岸がきれいな黒津崎海岸にあるホテルに宿泊したのだった。
　今日は結構な強行軍だった。

　それでも予定していたところは全部は回れなかった。取材と行っても、ほとんど写真を撮るばっかりだったが。　まあ、市役所から貰った資料は実に詳しい。両子寺でもらった峯入りの資料を悪丸君の資料と自分の感覚と写真を組み合わせれば、まあ、ルポにはなるだろう。
　読者が「日本紀行」を読んでくれて、現地へ行ってみようと思ってくれれば大成功なのだ。
　そういう意味では昨日の国見温泉と今日の黒津崎海岸のホテルのいい印象が後押ししてくれるだろう。 

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　翌日、白砂青松の海岸を散歩した。
ここは青い松と、白い砂浜と、黒い砂鉄のコントラストがいい。
　戦時中には砂鉄の採取が盛んに行われていたらしい。八畳石という巨岩もいいね。尻岩なんてのもあるよ。
近くには小さな古墳群がある。静かでいいね。悪丸君は子供のころ、この古墳に潜って遊んだこともあるらしい。
　その後、国東の「弥生の村」を散策した。
　古代の遺跡、安国寺遺跡の資料が揃っている。そして安国寺へ行く。
ここには足利尊氏の木像があるのだ。なんで国東にあるのかは知らないが。
　そして、午後から国東警察署に財前警部補を尋ねた。

　財前警部補は待ちかねていた。姫島の事件での、朝見との共同作業が心に焼き付いているらしい。
　国東警察署と大分県警の捜査によると、被害者は山口県長門市の小池さんという男性。
　アマチュア写真家としてけっこう、名が売れているらしい。以前は東京で情報出版の会社の取締役だったらしいが、とっくに会社を辞めているらしい。