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　麻生社長と山田が死んでから、数か月後、三人は秘密の会合を持った。
　警察の捜査も一段落し、ほっとする三人だった。一応思惑通りに事態は進行したのだ。
　麻生社長といちばん恩を感じていたのは河野だった。
それは麻生の家族にもよくわかっていた。
　そして、多額の保険金が首尾よく、会社に支払われた。保険金を受け取ってから、会社は間もなく解散してしまった。経営者麻生の遺族には一銭も払われなかった。
これが後の事件の遠い要因となったのだ。
　共同経営者たちは多額の分配金を受け取ってから会社を解散した。そして経営権を枝野が付き合いのあった安倍伸二という男に格安の価格で売ったのだった。
　新しい会社は《週間マンデー》といい、一応週刊誌の形式をとっていたが、実際は不定期刊行だった。今でもその情報誌は存続していて、情報週刊誌としてけっこう有名になっている。マンデーなのに、「金曜日（フライデー）｣に発行することが多い。
　ある意味、もっとも利益があったのは安倍伸二だったのかもしれない。そこそこ実績のある情報出版会社を格安の価格で手に入れたのだから。
　枝野と安倍の関係は何だったのか、誰も知らない。ひょっとしたら、安倍はある程度の事情を知っていたのか？
　三人はそこで業務の引継ぎのために、しばらく在籍していたが、やがて会社を去り、ばらばらになった。
　そしてそれぞれの故郷へと移住したのであった。
　小池は山口県長門市へ移住して不動産屋さんを営み、河野は仙台市へと移住して、小さな本屋さんを営んだ。そして枝野は兵庫県姫路市でおもちゃ屋さんを経営した。
　三人はそれぞれ、お互いに見知らぬ土地へと移住して、それぞれが新しい生活に入った。新しい生活を始めるに十分な資金を持って移住したのだった。
　彼らはしばらくは互いに連絡しあったが、それも途絶えてしまった。完全に知らない人間になったのだ。

　河野は麻生社長の亡くなった前後の事情をそれとなくにじませるような便りを麻生の遺族にのこして、仙台へと去った。
　《週間マンデー》に売った権利金は微々たるものだった。河野の強い意向で、麻生の遺族にも少し支払った。そして自分が受け取った保険金の一部も麻生の遺族に贈ったのだった。
　経営者麻生は東京都・北区に住んでいたが、遺族の生活は苦しくなり、残された病弱の妻と男の子は苦しい生活を送ることになった。
　住んでいた家も売り、アルバイトしながらの苦しい生活が続いた。
　そして、数年後、残された男の子は高校卒業時に、母から父親の悲劇を聞かされて、真相究明の念に燃えるのだった。