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　山田はその夜、駐車場の車の中で夜を明かした。翌朝、のんびりと起き出し、京都へ向かった。八条口でレンタカーを返却し、時間つぶしに京都観光を楽しんだのだった。

　京都駅から四条烏丸まで地下鉄でいく。そこから四条通をぶらぶら歩き、四条大橋を越え、南座の前を歩いて八坂神社へ。そこから丸山公園を覗く。そして、高台寺へ行くのだった。
　ここは秀吉の正妻の寧々の菩提寺だ。そこからさらに二年坂、三年坂を清水寺へ行く。まあ、見るべきものはあるが、なんせ外国人観光客と修学旅行生で一杯だ。ちょっと味気ないね。
　そこから大谷墓地の脇を下った。東山通に近づいたところに、肉弾三勇士の慰霊碑があった。へえ、こんなところに肉弾三勇士の慰霊碑がねえ。
　そこから五条通りを鴨川に向かって歩く。途中に若宮八幡宮がある。行ってみた。へえ、幕末の孝明天皇の臍の緒が埋葬されている。さすが、京都だ。
　そこから少し戻って東山通を四条へ向かって歩く。少し行くと、左手に六道珍皇寺。小野篁が冥界へ出入りした井戸がある。その先には幽霊子育て飴を売ってる店がある。
この飴は結構おいしいよ。

さらに東山を歩くと、安井金毘羅宮。縁切り石があるところだ。ここもいっぱいの人出。その先に建仁寺だ。ここもいいね。祇園を少し歩くと四条通だ。いっぱいの人出。うろうろする。祇園からバスで東山三条へ出る。
　ここから地下鉄で二条城前駅へ行き、二条城を散策した。いいね。ここも。観光地巡りをしながら、うろうろした。近くの神泉苑もいい。
ここは源義経が静御前を見初めたところなんだって。
　またここでは東寺の空海の弘法さんと西寺の守敏大師が雨乞い合戦をして空海が買ったんだって。怒った守敏大師が空海を弓で撃ったんだって。あたる寸前に地蔵さんが身代わりになったんだって。その時のお地蔵さんが残ってるよ。西寺がなくなったのはそれが原因か？
　ここ、神泉苑のその近くでは「どろぼう」ってお菓子を売っている。泥棒をしてでも欲しくなるようなお菓子だって。けっこうおいしいよ。
　そして三時過ぎに、京都駅に戻った。そこから湖西線で堅田へ向かった。

 一方、枝野は十二時過ぎの新幹線で、京都へ向かった。奈良県警からいつ、連絡があるか、分らない。万一の場合を小池に頼んで京都へ出かけた。
　山田との遭遇を避けるために、いったん、京都駅から堅田へ行く。そこから、唐崎へ戻った。
　枝野は野球帽をかぶり、サングラスをして、スニーカーを履いて、白いポロシャツ姿で変装して現れた。四時ちょっと前に唐崎駅に着いた。近くのコンビニで、缶ビールや焼酎などを買い込んだ。そして、駅前の公園で待っていた山田に電話で指示した。
「ああ、山田君か、俺だ。今、着いたよ。いいか、よく聞けよ。このまま真直ぐ琵琶湖に向かって歩けよ。唐崎一丁目南まで。そこを左へ歩くんだ。唐崎一丁目で右に曲がる。すぐに唐崎の松だ。後をついていくからゆっくり歩け。お互い、あまり人に見られたくないだろ」
「わかりました。先に歩きます。道は適当に電話で指示してください。電話で」